建築に関わる契約形態は多岐にわたりますが、設計契約と工事請負契約の違いは、契約の手間や工期が延長する可能性があるなど、施主にも影響するため、違いを知っておくことは重要です。この記事では、設計契約と工事請負契約の違いと、メリット・デメリット、注意点などについて解説します。
設計契約と工事請負契約の基本的な違い
設計契約とは、建物や住宅の設計に関する業務を委託する契約です。この契約では、どのような設計を実現するのかについて施主と設計士の間で合意し、その業務が完了した時点で報酬が支払われます。
設計契約は、専門家のノウハウを活かしながら、依頼者の希望に沿った設計図を作成し、協力関係を維持して設計していくのが特徴です。施主の意見を取り入れながら設計していくため、委任、準委任のように位置づけられます。
一方、工事請負契約は、特定の建物の完成を約束し、その完成に対して報酬が支払われる契約です。ハウスメーカーのように、設計に関することが含まれる契約や、下請けの施工会社のように、依頼された図面をもとに施工する場合があります。
工事請負契約では、建設現場における工事の方法や手順、安全衛生措置などは、工事施工者の責任において実施されます。また、工事の遅延や仕上がりの問題など、発生した損害についても、工事施工者が責任を負うことになる契約です。
設計契約と工事請負契約のメリット・デメリット
以上のように、設計契約と工事請負契約は大きく異なる契約です。住宅を建てる際には、設計契約と工事請負契約を結ぶパターンと、設計が含まれる工事請負契約のみを結ぶパターンが考えられます。設計契約と工事請負契約を別々にすることには、それぞれメリットとデメリットがあるので、ここで確認していきましょう。
メリット
建築物や住宅の設計において、設計事務所と個別に設計契約を結ぶことで、要望をていねいに取り入れながら、唯一無二の家を作りあげられる可能性が高くなります。
多くの設計事務所は、規格や基準に縛られることなく、施主の要望に合わせてプランを作成し、プラスアルファの付加価値を提供するために尽力してくれます。
形や仕上げについても自由度が高く、予算に応じて選択できるため、設計事務所に依頼することで、こだわりや予算に合った理想の家を実現できるでしょう。
一方で、設計が含まれた工事請負契約のみの場合は、それほど自由度が高くない傾向があります。普通の住宅を望む場合やこだわりがない場合は、ハウスメーカーや工務店による設計込みの工事請負契約が適しており、家にこだわりがある方は、設計契約を別途結ぶのがおすすめです。
また、施工会社から提出される見積もりは、設計者の実施設計図をもとに行われます。作成した設計者自身の目から見て、適切なのかどうか判断できるため、安心して契約を進められるでしょう。
デメリット
工事請負のみの契約とくらべて、設計事務所に依頼する手間がかかります。設計事務所との打ち合わせに多くの時間とエネルギーが必要なため、こだわりがない場合は合わないと感じることがあります。また、設計料やオーダー品の使用により、コストが上がる可能性が高く、工期も長くなることが予想されます。
契約形態の違いから見る設計契約と工事請負契約の注意点
設計契約と工事請負契約は、契約のタイミングと支払いのタイミングが異なるなど、多くの注意点があります。どのタイミングで契約するのかについても、各社によって大きく違いがあります。
設計に関して、ひとつ目の提案までは無料で提供してくれるものの、ふたつ目以降の提案からは設計契約してからという会社もあるためです。設計契約と工事請負契約の注意点を見ていきましょう。
流れを把握しておく
すべての契約は、タイミングや内容が異なります。住宅を建設する全体像をよく把握しておきましょう。設計契約は、設計だけの契約であるため、設計が完了したタイミングで工事請負の契約が必要です。
一方、工事請負契約は、完成した図面をもとに工事するか、設計も含めて請け負います。とくに設計契約と工事請負契約で会社を分ける際には、適切な契約になっているか確認しなければなりません。
合計資金に注意する
設計契約を結び、設計事務所に依頼する場合は、住宅建設に必要な資金の合計額がわかりにくいことに注意が必要です。設計契約のみで住宅が完成することはありません。必ず実際の住宅施行作業が必要で、どこかで工事請負契約を結ぶことになるでしょう。
まず、設計が完了したタイミングで設計に対する支払いが行われ、住宅建設が完了したタイミングで工事請負契約に対する支払いが発生します。設計契約と工事請負契約を分けることで、工事請負契約時の見積もりが適切か確認できるのはメリットです。
しかし、支払いの全体像が最初から見えにくく、予算オーバーになる可能性があることに注意が必要です。
まとめ
設計契約では設計のみを担当し、工事請負契約では実際の建設工事を担当し、設計が含まれることもあります。設計契約は、自由度の高い設計や専門家の視点を取り入れられる点がメリットとして挙げられますが、一方で、コストがかかる可能性もあります。工事請負契約は、自由度は少し下がるものの、ワンストップの対応が受けられます。予算やこだわりを考慮して、慎重に契約しましょう。